そうしたジレンマはミドルの心身にも影響を与えている。「ストレスが増えた」と答えた人の割合は40代後半が6割超で、「精神を病む社員が増えた」と感じる人も課長職、年収900万~1200万円層が最多だった(図30、31、32)。年収1000万円前後なら当面の不安はなさそうだが、植木理恵氏によると、「高収入はうつ病の始まり」という。

「収入が多くなると、それを維持しなければいけないというプレッシャーから『このままでは貧乏になるに違いない』という貧困妄想が始まり、うつ病になってしまう人が少なくありません。うつ病のきっかけはさまざまですが、私の経験上、ミドルのうつ病患者さんに多いのはこのタイプ。ぜひ気をつけてほしい」

今回は俯きたくなる分析結果が続いたが、もはやビジネスパーソンが活き活きと働くことは難しいのか。最後に守島氏からこんなアドバイスをいただいた。

「いっそのこと仕事で自己実現するというパラダイムから脱却してもいいのかもしれません。人が働きがいを感じるのは、自分の喜びとなるものを仕事を通じて得られたときです。人によってそれはさまざまですが、人生でほかに重視しているものが働くことで可能になるなら、それも立派な働きがいです。いずれにせよ、足元を見るより、少し冷ややかな視点で人生とキャリアを考えたほうが、働くことに意義を感じるのではないでしょうか」

※すべて雑誌掲載当時

(ライヴ・アート=図版作成)