2012年6月15日(金)

なぜそれでも「同期トップ」の役員になれたか -東レ経営研究所特別顧問

検証!「逃げたくなる問題」といかに向き合ったか【2】

PRESIDENT 2010年8月16日号

著者
吉村 克己 

ジャーナリスト。1959年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。IT・ビジネス・経済・社会問題に関する記事を執筆。著書に『よくわかる介護・福祉業界』『全員反対!だから売れる』などがある。

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吉村克己=文 大塚一仁=撮影

転機は、03年の東レ経営研究所の社長就任だ。社員30人を率い、時間のやり繰りがしやすくなった。家庭のことは話してあり、妻の調子が悪くなるとすぐに帰宅できる。そのうち、妻の症状が改善し、入院せずにすむようになった。

外出もできなかった妻が、いまでは友達と旅行に出かけて、食事も作れるようになった。長女は佐々木の手紙を読んでから憑きものが落ちたように元に戻り、友達のように仲良くなった。次男は就職し、長男はマイペースの生活を続ける。

家族揃って出かけた旅行のときのスナップ写真。いま佐々木家には再び穏やかな日々が戻っている。

「人間の幸、不幸は秤では量れない。小さな悲劇でも世界中の不幸が自分に降りかかったと思う人もいる。私にとっては妻が毎日、晩ご飯を作ってくれるだけで、これほどの幸せはありません」

06年、半生をまとめた『ビッグツリー~私は仕事も家族も決してあきらめない』を出版。当初、妻と次男は反対したが、原稿を書く過程で、改めて家族と話し合った。そこで、初めて家族の気持ちが理解できたし、家族も佐々木の状況と思いを理解してくれた。

佐々木は本のサブタイトルについて本当は正しくないのだという。

「家族が大変だったときに私を支えてくれたのはむしろ仕事でした。自己実現欲求の強い私にとって仕事は結果が出るので達成感があり、楽しい。仕事があったからこそ私は救われたのです」

佐々木にとって家族と仕事は選択の対象ではない。どちらも大切だからこそ知恵を絞り、乗り越えられたのだ。

「仕事が忙しくて家族と触れ合う時間がない」とこぼす前に、『ビッグツリー』を一読してはどうだろうか。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

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