充実の実験設備や理科ひと筋の先生に大満足の日々
東邦大付属東邦の、東邦大との連携による「学問体験講座」の実験風景。

「学校としてはバランスの取れたリベラルアーツ教育を志向していて、高校2年生までは文系も理系もほぼ共通のカリキュラムなのですが……。ただ、理科の時間が少し多めで、中1からプロセスを重視し、実験や観察をしっかりやっているのは事実です」と言うのは、同校の松本琢司教諭だ。充実した設備、隣接する東邦大学と提携した特別講座など、理系女子の知的探求をサポートする材料にも事欠かない。

「女子の第1志望が増えたとは感じます。御三家クラスの女子校をふって来てくれる生徒も、少数ですが確かにいます」(同校の四谷大塚80偏差値は女子63、男子60)

「受験するときから、理系に強い学校という理由で選びました」と言うのは、子供の頃から自然や生き物に関心があったという中学3年生の麻美さん(仮名)。

「実験室だけの棟があったりして、設備もすごいです」。子供の頃に入院したことがきっかけで医師の道をめざしている同級生の香織さん(仮名)も、やはり理系教育に期待してこの学校に来た。

「『理科ひと筋!』という感じの、風変わりで面白い先生が多くて、授業が楽しいです」

女子向けの理数教育が私立一貫校の新しいトレンドに?

進学実績も特徴的だ。東大合格者こそひと桁止まりだが、国公立医歯薬系学部への進学実績は、桜蔭や開成などのトップ校と比べても遜色がない。

「女子生徒の親御さんも、東大よりも医学部、ブランド私大の文系よりは中堅私大の薬学部を、というご家庭が多いですね。等身大の人生計画を立てていて、一方で社会的使命感も強い女子が多いと感じています」(松本教諭)

同様に理系教育に強い共学校として、理系女子の人気を集めつつあるのが東京電機大学附属中学校・高等学校。「東邦大東邦ともども、実験設備などの環境は中学、高校のレベルを超えています」(富永氏)。

森上教育研究所の森上展安氏は、「聖光学院から森英人さんというカリスマ数学教師を招いた、中央大学横浜山手が面白い存在になる可能性があります。中堅女子校の中では女子聖学院が、数学教育に力を入れていますね」と言う。

理系女子の動向によって、今後の中学受験地図は急速に塗り変わっていくかも。

(宇佐見利明=写真)