実際、世界の伝統的文化社会を調査してみると、土地の有力者は妻の数も多く、それに伴って子供の数も多い傾向があるという。そのため、ここでもまた、遺伝子をたくさん残すようコントロールされた男性は、人生で何度か「賭けをしたい」という衝動にかられるのである。

子供の志望校を決める際に、男性のほうが、女性よりも新しくできた学校に抵抗がないのもそのためで、「新しい学校に人生を賭けてみるのもおもしろいかもしれない」という考えが頭をよぎるからである。

もし、自分の子供が突然、「国内での受験をやめてアメリカに留学したい」と言いだしたときも、男親のほうが無意識のうちに共感して賛成するケースが多い。女親はいずれ賛成するにしても、最初は「そんな危険なことは、できればやめてほしい」という思いがよぎるはずだ。

志望校をめぐって、夫婦間で意見が異なる場合は、お互いのそうした心理を踏まえながら、時には夫から話し合いの場を設ける努力をしてみてはどうだろう。

その際、「なぜあなたはその学校を子供の志望校にしたいのか」という質問を妻に投げかけ、漠然とした理由を意識化してもらうのも一案だ。

挙げてもらった理由に納得がいけば、妻の意見を採用するもよし。納得いかなければ、「安全志向」や「賭けに出る」というお互いの遺伝子主導の影響を排除して、あくまでも子供の適性と幸せを一番に考えながら、冷静に話し合ってみてはどうだろう。

小林先生は、「脳の構造は簡単には変わらないため、人間はこれからも、狩猟採集時代にできあがった遺伝子の戦略や習性をそのまま引き継いで生きていく可能性が高い」という。

となればこれからも、男女間のすれ違いを解決するためには、動物行動学的視点が欠かせないということになる。

妻や夫が理解できない行動に出たときは少し距離をおいて、「これは、子孫を残したい遺伝子の仕業か?」「狩猟採集時代の習性の名残か?」と考えてみると少し冷静にもなれ、おもしろいかもしれない。

(小林朋道=教える人)