女性が人間心理を読み取る力が高いのは狩猟採集時代から

子供が志望校を目指して勉強に励む日々の中、模試の結果がいつもより悪かったり、生活面で学校の先生から注意を受けたりすると、妻のほうは気が気ではなくオロオロ。

しかし夫に相談をもちかけても、「そんな時期もあるさ。でも最終的には合格すればいいんだから」と冷静で、妻としてはおもしろくない。このように、女性はちょっとしたことで一喜一憂するのに対し、男性は結果だけを求め、細かい話を避けたがるのはなぜなのか……。

「動物行動学的視点からすると、人間が、狩猟採集時代に培ってきた男女の特性が関係しています」と小林先生。

「狩猟採集時代」、といわれてもピンとこないかもしれないが、人類の祖先であるホモサピエンスが誕生したのが、今から約20万年前。そのころからつい最近まで、人類はアフリカのサバンナで狩猟採集生活を続けてきた。

「女性は居住地の近くで、狩に出かけた夫の帰りを待ちながら、ほかの女性たちとコミュニティーをつくって、子育てを行っていました。子育てには多くの情報や経験談が役立ちますから、ほかの女性たちとのコミュニケーションは密接で、その関係の中から人間の表情や態度から心理を読み取る能力を高めていったのです。それが子育てにも生かされ、子供のちょっとしたしぐさから、体調や心の変化に気づくことができるようになりました。しかしその分、いろんな心配や不安がつのりやすくなったといえます」

また、前述したように、女性にとって子供は自分の遺伝子を残していくために大切な存在。エネルギーのかけ方も大きいため、日々の細々としたことが気になるのはある意味当然と考えたほうがよさそうだ。

一方の男性については、「コミュニティーを離れて男同士で狩りに出かけることが多かったため、獲物をどのような方法で捕らえるかや、狩りの道具など、目的を達成するための方法論を考えることが、特性として備わりました。子供に対しては興味がないわけではなく、狩りに出て獲物を捕らえることが自分の役割で、それが、結果的に子供を養ううえで重要だということは意識していたと考えられます。そのため、今も男性の意識は家庭よりも仕事中心で、仕事をうまくやっていくためにはどうしたらよいか、出世するにはどうするべきか、ということが何よりも重要なのです」と分析する。