「ふろしき王子」は、その名前どおり、風呂敷を背負い、風呂敷を使った袋をぶら下げて現れた。いずれも、布を切ったり、縫ったりした作り物ではなく、ほどけば普通の四角い風呂敷に戻るものだ。「布というものは、四角いままで使うのが基本です。

昔、布を織るのは大変で、いろいろな形になどできませんでした。四角に織って、そのまま使うのが、一番合理的でしょう」「ふろしき王子」こと「ふろしきライフデザイナー」の横山功さんは、そう言って、「風呂敷一枚あれば、何でもできますから」と付け加えた。

横山さんは、大学生のときに、ゴミを少なくしようと買い物袋に風呂敷を使い始め、その万能性のとりこになってしまった。実際、海外旅行へも、スーツケースなど持たずに、風呂敷だけで行って、「何の不便もなかった」そうだ。

生活なんでも調査隊の隊員1号である私は、風呂敷といえば、真ん中に物を置いて対角線の角を結んで使うことくらいしか、思い付かない。だから、今回の調査では、基本的な「平包み」や「巻き包み」、さらには「ビン包み」や「スイカ袋」などを教えてもらおうと考えていた。

ところが、横山さんはもっと実用的で、普段使いできるような方法を伝授してくれるという。横山さんが招かれる講習会や、開催しているワークショップなどでも、アウトドア系、サバイバル系の使い方に人気が集まるそうだ。横山さんは、物を包むだけでなく、風呂敷で日よけ帽子、手袋、腹巻などを簡単に作ってみせた。風呂敷の使い方は無限というのも、あながちウソではない。

そうした応用編に入る前に、風呂敷の結び方を学ばなければならない。学ぶというと大袈裟だが、大切な結び方は一つしかない。「真ま結むすび」である。

真結びは、風呂敷の角と角を持って、まず1回結ぶ。この段階では、結び目はできていない。これを「一つ結び」という。

真結びは、さらにもう1回結んだものだ。なーんだ、日ごろよくやっているよと思われるかもしれないが、そこに落とし穴がある。真結びは、2回目に結ぶときに、両方の角が元の布に重なるように結ばないといけない。逆に、角が布に対して垂直になるのは「縦結び」といって、風呂敷ではほとんど使わない。縦結びは、不意にほどけたりするからだ。

隊員たちは、横山さんに何回も真結びの練習をさせられた。基本はこうだ。

(1)左側の角を上にして1回結ぶ。

(2)その角は、今度は右側の下にきている。その右下にきた角を上に持ち上げて、反対の角の上からもう一度結ぶ。

(3)結び目をしっかり締める。

こうすると、それぞれの角は、元の布に重なる。これが正しい。

ほどくときは、結び目をこじあける必要はない。角を反対方向にひねってやると、角と布が一直線になるので、結び目を引き抜けばいいのだ(うまく一直線にならなければ、反対側を試す)。慣れれば「1秒でほどける」。