2012年6月13日(水)

なぜ自由を与えると、部下のストレスはたまるのか

PRESIDENT 2012年5月14日号

著者
下園 壮太 しもぞの・そうた
陸上自衛隊心理カウンセラー、コンバットストレス(精神過労)教官

下園 壮太

1959年、鹿児島県生まれ。82年防衛大学卒業後、陸上自衛隊入隊。現在は陸上自衛隊衛生学校にて、衛生科隊員(医師、看護師など)に対するメンタルヘルス、カウンセリングなどの教育にあたる。著書は『35歳クライシス』『平常心を鍛える』『今度こそ、「うつ」から抜け出す本』『しばられてみる生き方』ほか。

陸上自衛隊心理カウンセラー 下園壮太 構成=中沢明子
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自由が少なくストレスフルなイメージがある軍隊。だが、適度に制限のある環境は、実は想像以上に働きやすいという。なぜなのだろうか。

「情報の選択」がエネルギーを激しく消耗させる

いまの日本は「自由」が尊重される社会だ。されすぎている、と言ってもいいかもしれない。加えて、自由に選べる「選択肢」の数も多すぎるという側面がある。

平成19年度の厚生労働省の調査によると、日本人の約70%以上がストレスを抱えているという。もちろん、数十年前と比較すれば増加傾向だ。自殺、うつといった深刻な状況でなくても、ストレスから会社を休む人は、いまや珍しくない。

たくさんの選択肢から自由に自ら選べることは、基本的には素晴らしい状況だろう。「自由化された社会」は民主的だし、「自分の思うように生きられる」という意味で、一見、マイナス要素はなさそうだ。

しかし、私は「自由の過度の拡大」が、今日の日本社会のストレス増加の理由のひとつと考えている。

私たちは「エネルギー消費=肉体を使うこと」と捉えがちだが、無数の選択肢のなかから「選ぶ」という頭脳労働もかなりのエネルギーを使う。

インターネットで簡単に情報を集められるようになった現代では、常に「集めすぎた」情報からの取捨選択を迫られる。確かに便利な世の中だが、無数の情報処理という頭脳労働によって、私たちのエネルギーが日常的に相当消耗させられている「マイナス点」も見過ごせない。

なぜ、体を動かさず、頭で「選ぶ」だけでエネルギーをそれほど消費するのだろうか。それは、情報を選択するさい、そこに必ず「感情」が伴うからである。感情は、環境への適応のために動物が「自発的に行動するよう」に、仕組まれたプログラムだ。たとえば、危険を察知できるように、人間の心は「恐怖」を感じるようにできている。

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