今年(注・2009年)3月、群馬県渋川市の高齢者施設「静養ホームたまゆら」で火災が発生し、入所者10人が死亡する事件があった。この事件も、行き場のない高齢者と、それを持て余して地方に押し付ける福祉行政の実態が浮き彫りにされた格好だ。というのも、この渋川の施設、入所者の多くは東京都墨田区からの紹介だったのだ。

墨田区にはケア付き住宅がなく、区内の老人ホームは満員状態。墨田区は生活保護費の負担と引き換えに、区外の施設に高齢の生活保護受給者を送り込んでいた。その一つが「たまゆら」だったのである。

私は「東京棄民」と呼んでいるが、つまりは棄民政策である。これは墨田区に限ったことではない。都市部の自治体はどこも、地代、建設費ともに高いから、簡単に老人介護施設をつくれない。しかし高齢化が進んで施設に入らなければ生活できない住民は増える一方だから、結局は地方の高齢者施設に越境して入ってもらうしかない。

他方で、高齢者の年金や生活保護の受給を狙ってひと儲けを企む輩もわいて出てきて、無届けの高齢者施設があちらこちらにつくられ、自治体に売り込みをかける。

届け出のある高齢者施設なら介護士の数は法的に決められているし、防火設備やバリアフリーも整っているが、無届けではそうはいかない。NPOが運営していたという渋川の「たまゆら」の実態はわからないものの、報道によるとやはり無届けの施設で建物は古く、スプリンクラーは設置されていなかった。火災の晩も担当者が一人しかいなかったために、20人以上もいた入所者を運び出せなかったという。

こうした「現代版・姥捨て山」は全国に600施設以上ある。明日はわが身、なのである。