国内の起業数が激減している。

IPO(新規株式公開)市場といえば経済の活況度と成長性を占う重要な指標の一つだが、2008年の日本のIPO社数は全市場合計で年間49社と、前年の121社から劇的に減少した。IPO社数は例年年間100社以上を数え、ピークの00年には200社を超えていた。それが今や4分の1以下、過去20年でバブル崩壊後の1992年の27社に次ぐ低水準となった。

実はIPOはアメリカでも激減している。理由は明白だ。エンロンとワールドコムという2つの巨額不正会計事件を受け、02年に内部統制や財務ディスクロージャーの徹底を目的としたサーベンス・オクスリー法(SOX法)が成立したからである。

これをやっちゃダメ、あれをやってはいけないという厳しい規定が定められ、いちいち外部の会計士や弁護士のお墨付きを得なければならない。要するに規制がキツくなり、会社経営が楽しくなくなったのだ。だから有望な会社でも、最近はIPOを目指さず大企業に売却する道を選ぶ。

市場関係者全員が大きな期待を寄せていた動画コンテンツ共有サイトのユーチューブは06年10月、上場しないでグーグルに身売りしてしまった。これまた人気赤丸上昇中だったネット決済サービスのペイパル(PayPal)も02年、ネット通販・オークション大手のイーベイ(eBay)に身売りした。

買う側の企業とすれば、有望なビジネスモデルが丸ごとセットで手に入るし、SOX法などに対応するシステムも部隊もすでに整っている。売る側も、面倒な手順を踏んで上場したところで下手すればお縄頂戴になるくらいなら、経営に手馴れた大企業に売り払ったほうが手っ取り早く大金が転がり込んでくる。溜息が出るのは今時の注目企業の株を買うチャンスを失った投資家だけだ。

こうした理由でアメリカの上場件数も激減したのだが、起業熱そのものが冷めたわけではない。IPOから身売りにゴールが変わっただけで、起業自体は増えている。

一方、エンロンやワールドコムほどの会計不祥事があったわけではないのに、日本はアメリカに追随してSOX法を猿真似した金融商品取引法(日本版SOX法)を取り入れた。アメリカ同様、これがIPO離れの大きな要因になっているのだ。