日本の新聞や雑誌では、いわばこのバックグラウンドのノイズレベルが高過ぎて、そのままでは何が起こっているのか識別できにくいことが多い。また、政治家やビジネスマンを、必要以上に原色で塗りつぶす傾向がある。黒の人はまっ黒に、赤の人はまっ赤に、という具合である。

しかし、どんな政治家でも功罪相半ばし、どんな実業家でも失敗や成功の経験はあるに違いない。瞬間風速で人物評価をしたり、絵の具を塗りたくったりしては、正しい描写とは言えない。どんな国にもその国の物の見方やコンセンサスというものがある。しかも、ひとたびその国の内部に入ってみれば、外からは見えなかった微細な構造(ニュアンス)というものが見えてくるものである。

外国人にとっては日本はまだまだ一つなのである、と言ったら、日本人である読者諸氏は、その一つの姿とは一体どんな怪物なのだろう、と思われるに違いない。実際、外国人の中で「関西」を知っている人は少ないし、関西と関東の絶妙な違いを知っている人は皆無に近い。日本の会社といえば年功序列、終身雇用、と思っている人が多いが、それは一部の大企業だけで、年間二万近くの中小企業が倒産している、などということはまったく知られていない。