僕が目指すのは「熱いチーム」です。そういう意味で、2008年第3節、9月20日に行われたクボタ戦にはサントリーらしさがありました。4点差に詰め寄られた後半33分、ゴールポスト正面22メートルラインでペナルティを得た場面。キックかスクラムを選択できるんですがキックなら無難にゴールを奪え、3点が追加できる。残り試合時間を考えれば、勝利はほぼ間違いない。ところが、ゲームキャプテンの大久保直弥は迷わずスクラムを選んだ。僕はずっと選手たちに「サントリーは、どこで勝つんだ」と言ってきました。そのひとつがスクラムなんです。あの場面、勝つだけならキックを選択してもよかったけど、自分たちらしさを出すという部分で意味がある選択でした。

観客も喜んでいた。サントリーは違うね、他と違うラグビーをするね、と。結果、スクラムで相手を押した後、パスが続いて、右隅にトライが決まった。あの時、観客席からの歓声が凄かったじゃないですか。ああいうファンが喜ぶラグビーを大切にしたいんです。

今年もチームが大きく変わりました。まず新人の畠山健介(早稲田大学出身)。去年、トップリーグで一番スクラムが強いと言われた池谷陽輔をリザーブに追いやり、先発でゲームに出場することも珍しくない。同じく慶応大学主将だった金井健雄や長友泰憲(中央大学出身)も試合に出ています。

よそのチームの新人からは「トップリーグの壁を感じる」「コンタクトで負ける」という話を聞くんですが、うちの選手に限ってはそういうのがありませんね。これは試合で使うからですよ。よそならあそこが足りない、ここが足りないといって使わないかもしれないけど、僕は気にしません。ひとつでも持ち味があればチャンスはある。僕は自分の持ち味を出してチャレンジする”空気”を大切にしたいんです。去年も45人いるメンバーの36人が(一軍の)Aチームを経験している。これはどのチームより多いと思いますよ。やっぱり、できるだけ多くの選手にAチームを経験させることが大切です。BチームでよかったらAチームでチャンスを与えて、遜色ないプレーができれば戦力になる。それが選手層の厚さにつながるんです。

選手は5年先の戦力構想をシミュレーションしながら獲得しています。もちろん、背番号を空けて待っているようなことはしません。新人もベテランも関係なく競争してポジションを奪うのが鉄則です。ただ力が同じなら若い奴を使います。未知数な部分がありますから。それに若い選手を使わないとベテランの力がどんどん落ちていくんです。ベテランもポジションを奪われたくないなら頑張ればいい。もし、それで腐るようなベテランなら最初からいりませんよ。そういう競争からチームの”熱”は生まれるんです。

ただ、ルーキーがベテランに勝てない部分に経験値があります。予測できないプレーに対する反応とか対応力というものです。これは徹底したシミュレーションから、ある程度、克服できる。ルーキーでも思い切ってプレーできる環境は作れるんです。

※2008年10月にインタビュー。