ユーロ圏より財政状態の悪い日本はハイパーインフレの危機に直面している。
生活を守るための「保険」となるのが、外貨を中心とする資産分散だ。

フジマキ・ジャパン代表取締役
藤巻健史●ふじまき たけし
1950年東京都生まれ。74年に一橋大学商学部を卒業し、三井信託銀行(当時)に入行。80年、米国ノースウエスタン大学大学院ケロッグ・スクールでMBAを取得。ロンドン支店勤務を経て、85年モルガン銀行に転職。東京支店長などを歴任し2000年より現職。『日本破綻「その日」に備える資産防衛術』など著書も多い。一橋大学経済学部などで講師(非常勤)を務める。

ユーロ圏より危ない日本は
ハイパーインフレの危機

今、世界的に大きな問題となっているのは“ポピュリズムの政治”、つまり大衆迎合政治だと思います。

ユーロ圏では、フランスは大統領選挙で、ギリシャでも総選挙で緊縮財政派が負けました。こうなると、もう駄々っ子ですよ。政治がポピュリズムに負けて財政拡大が続けば、もっと大変なことになるんですけどね。

ただ、それでもユーロ圏はまだ多少は市場原理が働いています。金利が上がっていますからね。これは、「このまま財政を拡大していくと危ないよ」と市場が警戒警報を出してくれているんですね。だから、ユーロ圏は最悪の事態に備える時間的余裕があるし、心構えをしている。

ところが、日本は違います。日本のポピュリズムは世界でも最たるものだと思います。長年のバラまきで、膨大な累積赤字が積み上がっているんですから。その一方、市場原理が働いていない。これだけ財政が悪くても金利が上がらなかったんです。

普通なら、これだけ財政出動してお金をバラまくと、長期金利が上がって、市場が警戒警報を出してくれるのですが、日本ではいろいろな理由のせいで、それが出ないんですね。

日本はユーロ圏よりずっと危ない状況だと思います。おできに例えれば、ユーロ圏のほうは膨らみながらも小さな穴があって、少しずつ膿が流れていく状況。ところが、穴もなく膿で膨れあがっているのが日本です。細い針を刺すだけ、もしくはさするだけで、破裂する可能性があるんです。