既存のものをうまく活用できない場合は、先に紹介した2軸マップやロジックツリーを使うことになる。これらのフレームワークの理論はシンプルだ。ただし、うまく使いこなすためには少々コツがいる。軸や箱の設定によって分析の精度が大きく変わってしまうからだ。

2軸マップの軸は、MECEになっていることが大前提である。もし2軸マップの軸がMECEでなければ、箱を網羅的につくることができない。

どうすれば漏れなく、ダブりのない軸を設定できるのか。トレーニングの一環としてお勧めしたいのがフェルミ推定だ。

「昼休みに1時間、蛍光灯を消すことの節電効果は?」

このようにつかみどころがない数量について、論理的に推定して概算することをフェルミ推定という。この問題を解くには、まず自社にある蛍光灯の数を求める必要がある。このとき、あたりを見回して蛍光灯を数えるのは、どう考えても非現実的だ。蛍光灯の数を把握するには、ビル全体を俯瞰して「オフィス/廊下/トイレ」と切り分け、それぞれの部屋について蛍光灯の数を計算していくほうが、明らかに合理的で漏れも生じづらい。

図を拡大

これはまさにフレームワークで軸やクライテリアを設定するときと同じ発想といっていい。フェルミ推定で全体を分解して要素を洗い出すプロセスは、そのまま軸を設定するトレーニングになるのだ。

逆にいうと、フレームワークを使いこなせる人なら、フェルミ推定も恐れるに足らずである。これからの時代はコスト削減の会議で「昼休み消灯の削減効果」が議題にのぼるシーンも十分に考えられるが、推定例のように短時間で精度の高い概算を出せば、周りを驚かせることができるに違いない。

(構成=村上 敬 撮影=相澤 正)