昨年秋、認定こども園を視察する野田佳彦首相(横浜市青葉区)。

5月10日、「総合こども園」の創設を柱とする関連法案の審議が衆院本会議で始まった。総合こども園とは、2013年度から導入される幼稚園と保育所の一体化施設の名称だ。文部科学省管轄の「幼稚園」と厚生労働省管轄の「保育所」という縦割り行政の解決と、都市部の慢性的な待機児童の解消のため、1990年代後半から行われてきた「幼保一元化」の一環である。

総合こども園は、定員に余裕がある幼稚園を活用できることがメリットの一つだ。しかし、幼稚園には、待機児童の大半である0~2歳児の保育のノウハウがない。幼稚園への補助金である私学助成金がなくなることも考えると、総合こども園に移行するインセンティブがない。都市部では保育士不足などの原因から保育園が増えない現状があり、待機児童の解消は簡単にはできそうにない。

そもそも、幼保一元化とは「保育」の部分だけを重視したものではなかったはずだ。「女性の労働力の確保という労働政策にとらわれすぎて、“国民のパフォーマンスを高めるための幼児教育”という視点で議論されていない」とニッセイ基礎研究所主任研究員の土堤内昭雄氏は警鐘を鳴らす。

ノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・ヘックマンは、幼児期の教育投資効果に関して「同じ1ドルを幼児期に投資した場合と大人になってから投資した場合とでは、前者のほうがリターンが高い」という論文を発表している。たかが保育施設の話ではなく、子どもと国家の未来を担う政策であることを忘れてはならない。