国内ビジネス利用は遅れ
成否わける「使いやすさ」

日本のネット文化は独特の進化を遂げたが、ビジネス面でのネット利用では後れをとる。アメリカではこの間、「ネットはビジネスになる」との認識が広まり、99~00年にかけて、アマゾンやグーグルなどの「ドットコム企業」による「ドットコムバブル」が起こる。バブルは短期間で崩壊したが、これにより消えた会社もあれば、くぐり抜けて今も成長し続ける会社もある。その分かれ目は何だったのだろうか。90年代には、ハードの性能や通信速度の不足が成否を分けたが、00年以降に成否を分けた大きな要因の一つが、「ユーザーにとって使いやすいかどうか」だった。

(PANA=写真)

「特に重要な点は『意識せずにネットを使えること』だ。01年にアップルが『iPod』を発売したときには、現在の成功は予想されていなかった。同じ程度の性能を持つ商品はほかにもたくさんあったからだ。しかしネットを通じて楽曲を販売する『アイチューンズミュージックストア』が03年に開始されると、瞬く間にトップシェアを獲得した。ネットで楽曲を販売するサイトはほかにもあったが、携帯プレーヤーと販売サイトをひとつに繋げて、ネットを意識せずに使えた点が大きかった」(砂原氏)

企業内でも、「ネットを意識せずに使えるサービス」は広がりを見せる。

「00年ごろ、ASPという用語が流行した。これは営業支援や在庫管理などの業務用パッケージを購入せず、ネット経由で利用するというもので、課金は通常は月額料金。当時は通信回線が貧弱で、スムーズな作業は難しかったが、現在では、高速の通信回線が劇的に安くなり、SaaS(サース)という用語で、一般的になりつつある」(城田氏)

SaaSは価格だけでなく、機能拡張のスピードの面でも優れている。SaaSでは、1年に3~4回のメジャーバージョンアップが行われるほか、細かな機能追加、仕様変更は日々行われ、こちらから指示せずとも、勝手に機能向上が図られる。