つまり、ユニ・チャームにとって、自社でメールシステムを持つことはポリシーに反し、何よりも成長を鈍化させる弊害にほかならないと判断したわけだ。これが、Gmailを採用することになった最大の理由であり、単に流行のクラウドサービスを使いたいという考えではない。

「お陰で、本来であれば初期投資に数億円かかるところが、10分の1程度の費用でリニューアルできました。運用コストやメンテナンスコストからも解放され、ランニングコストの大幅な圧縮にも繋がったのではないでしょうか」(弓野さん)

だが、新たなシステム導入に社員全員がすぐに納得したわけではない。セキュリティ面を含め、懐疑的な声も聞こえたという。

「こういった疑問に答えるため、運用開始にあたり、社内で勉強会を開催しました。従来も新しいシステムを取り入れる際は操作方法などをガイダンスするのですが、今回は『なぜ外部のサービスを使うのか』について、理由や使うことのメリットも含め、説明しました。だからこそ十分な納得を得られたのだと思います」(元井さん)

導入後の反応も上々だ。Google Apps向けのGmailは、25GBものメール保存容量があるので、以前のように容量を気にすることなく使え、およそ10年は過去のメールを削除する必要もない。何よりも検索精度が高く、欲しいメールを瞬時に探し出せるようになったのも好評だったようだ。

「あらかじめ社員に写真の登録を呼びかけ、送信者名にマウスのカーソルを重ねると顔写真が表示されるようにしたり、簡単な用件であればチャットで済ますこともできます。私たちの場合、海外のスタッフとも頻繁にメールをやり取りするので、コミュニケーションツールとして大いに役立っています」(弓野さん)

ユニ・チャームでは今後2年をかけて、国内外のすべての拠点においてGmailを導入し、グローバルにおいてのメリットを享受したいという考え。「今後は、グループウェアなどでも、Google Appsに限らず、よい製品があれば取り入れていきたいと考えています」(弓野さん)というように、さらに効率化を推進する構えだ。

このGoogle Apps、個人でも年間50ドルで利用できる。無料のGmailでも7GBの容量があるが、Google Appsならそれ以上。独自ドメインにも対応している。システムを保有する時代は、そろそろ終わりを告げようとしている。