これから資格取得に取り組むうえでの基本的な考え方として、笠木恵司氏はほかの人にはできないことができる「『とんがった』プロ人材を目指せ」と言う。資格の世界でも、未開拓の「ブルーオーシャン」を目指せというわけだ。

「多少とんがっていないと、外にでたときに使いものになりません。企業もこれまでは『こいつは協調心が強い。先輩に逆らわないだろう』という採用の仕方をしてきましたが、組織がそんな人間ばかりになったら、誰が新しいビジネスを引っ張ります? 資格はその人が持つプロフェッショナル性を見定めるための看板であるべきです」(笠木氏)

もう一つ、資格取得の基本的な考え方として押さえておくべきなのが、「自分の技能を高度化するか、横に広げるか」(笠木氏)という方向性の設定である。

高度化とはある分野のスペシャリストを目指すということであり、横に広げるとは管理者、プロ経営者を目指すということである。例えば経理部門に従事している人が簿記3級を取得した後、さらに簿記1級、税理士、公認会計士を目指していくのか。それとも人事労務の仕事も理解したいので社会保険労務士の取得を目指していくのか、といった違いである。

それでは今後、有望になるのはどんな分野だろうか。笠木氏は「『とんがった』プロ人材になれる新しい分野」として、次の8分野を挙げている。


1)政策創造・経営戦略立案

2)組織&システムデザイン・マネジメント

3)環境経済・環境経営

4)ファイナンス&国際会計基準(IFRS)

5)知的財産管理・国際標準

6)CSR(企業の社会的責任)

7)国際関係

8)人間関係スキル

これらの分野は、その道のプロがまだ多く存在しない、新しい領域である。

例えば、社会的責任を意識した企業経営がますます求められる潮流の中で、「CSRができます」という人材はまだ少ない。ならば、その領域は自分がプロの人材として先駆者になれるチャンスがあるということだ。

「50代になった管理職には、新しい分野が苦手な人が多い。若手や中堅のビジネスマンは、そうした分野のプロになるべきです」(笠木氏)

ただ上記の8分野を眺めてみると、必ずしもそれぞれのテーマとぴったり対応した資格が存在するわけではない。それは、新しく生まれた需要に資格の創設が追いついていないからといえよう。逆に、これまで世の中に必要があって存在した資格でも、需要がなくなって衰退していくものも出てくるだろう。

どの資格取得にチャレンジするかを検討する際には、そうした見極めを行い、どうすれば自分を活かせるかを考えることが必要である。

※すべて雑誌掲載当時