仕事の原動力になるものは2つある。愛とエゴである。嫉妬心がやまない人はエゴの強い人だ。そういう人は、今より高いポジションを手にしたとしても、「もっと上を」という欲望を抑えることができない。少なくとも社長になるまで救われないだろう。だからこそ、この流れをどこかで断ち切ることをお勧めしたい。

必要なのは意識改革である。エゴモードを、“愛”モードに切り替える。20代や30代なら、自分の出世や収入のためだけに頑張るのもよいだろう。しかし40代になっても自分の欲のためだけに働いているようでは、仮に出世できたとしても、人望や信頼という人間として最も大きな財産を失うことになるのではないだろうか。

パソナの元社長上田宗央さんは、若い頃から決めていたことがあるという。それは上司でも同僚でも部下でも、あるいは仕事とは関係ない人でも、人と出会ったら、「この人のためにこの瞬間、自分が何をしてあげられるか」、それだけを考え実行するということだそうだ。

上田さんによると、そうしているとときどきは相手の役に立てることもあり、思いがけない評価をもらったという。それが積み重なって、「あいつにもっと仕事をさせてみよう」となり、最終的に社長という役割を任されただけだとおっしゃる。

もちろんこれは謙遜だと思うが、私はここにひとつの真理があると思う。それは結局、仕事というのは自分がどれくらい他人の役に立ったか、という「お役立ちの総和」だということである。

だからこそ、ポジションや給料が上がることも大事だが、それより大切なのは毎日毎時間「自分は誰のどんなことにお役立ちできるか」という問いを持ち続けることではないだろうか。

※すべて雑誌掲載当時

(荻野進介=構成 交泰=撮影)