社会の一員であることをまずは自覚せよ

「見ていますよ」という合図を送り、監視者の存在を知らせる<br><strong>弁護士 河上和雄</strong>●東京大学法学部卒。ハーバード大学ロースクール修了。1976年のロッキード事件では東京地検特捜検事として田中角栄元首相らを逮捕した。
「見ていますよ」という合図を送り、監視者の存在を知らせる
弁護士 河上和雄
東京大学法学部卒。ハーバード大学ロースクール修了。1976年のロッキード事件では東京地検特捜検事として田中角栄元首相らを逮捕した。

不気味な事件が多い、世知辛い世の中です。危険は未然に防ぎたい。特に小さい子どもを持つ親ならばそう考えて当然です。たとえば変質者らしき男性が徘徊していたとして、主婦が個人として対することは危険ですから、警察に通報することになります。

しかし、怪しい人を見たらすぐに警察に通報するのは関心しません。騒ぎ立てる前に、留意すべき点があります。

まず、情報を確認すること。包丁を持ってふらついているのなら検討の余地はありませんが、だらしない服装の男性が酔っ払って歩いている、ぶつぶつと文句を言いながらうろついている、というだけでは変質者とはいえません。絶対に怪しい、とあなたが確信し通報したとしても、警察はそれだけの条件では動いてくれないでしょう。

情報の確認には、1人よりは2人、2人よりは3人が望ましい。世の中には自分とは違う行動を取る人が大勢いるわけです。自分の目から見て「怪しい」と思っても、世間的にはそれほどでもない、という場合だってある。怪しいと思える人物の挙動を、より客観的に見極めるには複数のほうがいいわけです。

そのときになにを確認するのか。その人物が具体的にどういう行為をしているか。人間の身体に危険を及ぼす危険性のある行為なのか、車や看板などの器物を損壊する危険性があるのか。警察に通報したときに、それらをきちんと説明できるかどうかが大事です。