ED治療に変革をもたらし
患者を救うPDE5阻害剤

かつてのED治療は、漢方薬を試してみるか、陰茎に注射を打つといった方法しかなかった。この状況を一変させたのが、PDE5阻害剤の登場である。錠剤の飲み薬で、使いやすいことも特長だ。

「PDE5阻害剤は、“勃起を助ける”薬です。勃起を起こす薬と考えるのは誤解。性欲もないのに勃起させるわけではなく、薬が効いている間ずっと興奮し続けて困るようなこともありません」

そもそも勃起は、性的刺激による現象である。性的刺激を受けると、陰茎の神経や血管の内皮からNO(一酸化窒素)が放出される。すると血管を広げるcGMPという物質が産出され、血流が促されて勃起の開始・維持ができるのだ。

ところが、動脈硬化によって血管内皮が傷んでしまうとNOの放出が十分でなくなるため、cGMPも少なくなる。結果として勃起に障害が生じてしまう。そのうえcGMPはPDE5という酵素に分解され、消えていく物質なのである。

PDE5阻害剤は、このPDE5の働きを阻止することでcGMPを長持ちさせる。こうして勃起を助けるのだ。

「PDE5阻害剤の奏効率は約80%にのぼります。心因性EDでも、マスターベーションに問題がなければ神経や血管は反応できるということ。それならPDE5阻害剤が効きます。何度かうまくいって不安が消えると、心因性EDは完治する例が少なくありません。一方、糖尿病によるEDは症状が重いのも事実ですが、約65%の患者さんがPDE5阻害剤で効果を得ています」

現在、PDE5阻害剤には3種類あり、作用の持続時間などが異なる。医師と相談のうえ、患者自身の生活パターンなどに合わせて選択するのが一般的だ。

「作用が36時間持続し、食事の制限もないタイプを選ぶ方々が増えてきています。飲酒に関しては、リラックスできる程度の適量なら問題ありません」