諸外国との交渉において重要なことは、相手に断わらせることである。

日米自動車戦争をはじめ、日本の産業外交のほとんどは外国にイニシアティブをとられ、圧力を受けたり要請を受けたりしている。日本はいつも、「それは無理です」「立場を分かって下さい」「できません」というパターンに追い込まれ、常に逃げ腰である。のみならず、その論理が相手に十分理解されていないから、申し込みを断われば、日本は卑怯だ、と思われやすい。

要は、こちらからどんどん代替案を出してやることである。自動車の場合なら、失業対策費を出そうとか、アメリカに喜んで工場はつくるが、日本並の生産性にいかない差額はアメリカ政府の財政負担にしてもらいたい(日本が雇用確保は保証するが、アメリカの低生産性の負担をすることはないという主張)といった二~三案を出すのである。そうすれば、むしろ断わるのは向こう側となり、日本は筋道にのっとって誠意ある申し出をした、ということになる。

アメリカ国内の調整がつかず向こうから断わらざるを得なかった、ということになれば、こっちの責任ではない。攻守ところをかえてしまえば、自分のフィロソフィーを守れるし、かつ相手にも負い目をもたせられる。自分が断わるのではなく、相手が断わらざるを得ないところに追い込んでいく――こういう点で、もっと日本は外交に長けてもらいたいのである。