実際、企業活動のなかでは、前向きの意思決定より後向きのもののほうに困難を感じるトップが多いようである。事業からの撤退、進出地域からの撤退、人員の整理等々。もちろんこれらのことをなんの拘泥もなくさらりとやるようなトップでは困りものだが、私のみてきた限りでは、こうした後向き意思決定をしないことによる収益上の打撃のほうがはるかに大きい、という状況を長引かせてしまいがちなのである。

トップマネジメントの時間の使い方や関心事の分析でも、明らかに弱い事業、弱い部門、弱い地域に向いている場合が多い。すなわち、十年たっても採算のとれない「新規事業」をなんとか生かそうと一大努力をするのである。アメリカ型経営者となるとまさに正反対で、強いものをさらに強くすることに心血が注がれ、あるところまでの努力でものにならない弱いものは切り捨て、ということになる。

もちろん、西欧諸国に先行された戦後の国際競争にあってわが国の今日があるのは、まさにこうした日本型、逆境の反転精神に負うところが大きいことは言うまでもない。しかし、これが行き過ぎることは厳に警戒しなくてはならない。同じ人、カネ、物を投入しても逆境の反転は効果が薄く、よほど戦略的に重要なものでない限り、投資の価値が疑わしくなるものである。