コンポーネント型のステレオ産業についても、同じことがいえる。この業界のユーザーの目的関数、ひいてはメーカー側の製品セグメントの主因は、かつて出力、騒音対信号比、瞬間応答性などの数字によって表わされるものだった。

だがいまでは、生存競争に勝ったメーカーのほとんどすべてが同じような性能特性の製品を作れるため、その製品セグメントの大きな源は、もはや再生音の質ではなくなり、装置の形、大きさに変わってしまった。つまり、メーカーは、ユーザーの居間で機器があまり大きな空間を占領しないように、個々の機器をできるだけ小型化する方向に向かっている。かつて高性能、ひいては高価格と結び付くものだった巨大な威圧的サイズは、少なくともヨーロッパと日本では、もう顧客がステータスシンボル視しなくなってしまったのである。

このように高度技術産業の花形としてのエレクトロニクス製品でさえ、素材産業と同じように差別化が困難となってきた。私はこれを技術的普及品(エンジニアード・コモディティ)と呼んでいる。コモディティで利益を出すことは至難の技である。