この世で最も合意を困難ならしめているのは、「持てるものを失ないたくない」という気持ちである。まったく縁のないものを持たなくても人は何とも思わないが、持てそうなもの、持っているもの、持っていたもの、などに関する所有権や利権をめぐる論議では対立が起こりやすく、妥協が得られにくい。利害の対立から出発して膠着状態に陥るのは典型的なルートである。

人類の歴史のうち、醜悪な部分はたいていこの所有権をめぐる争いであった。肥沃な土地、聖地、金銀、石油、財産、職、名声等々、その姿形は変わるが、基本的には限られた資源や富をめぐっての分配の争いである。

本当に力のある国や人間なら、すべてのものを失なっても零からスタートしてまた新しい世界を築けるが、それほど優れているという自負のない場合には執着する。これで、力に圧倒的な差があれば闘争にならないのであるが、両者の力が拮抗している場合には膠着状態に陥る。そして解決策のない泥沼へと突入する。