――立派な学校を見るにつけて、私は、自分自身がアメリカで十年前に発した言葉を思い出す……。

「アメリカの学校設備が良いのは教員を引きとめるためなのか?校長の見栄の競争なのか?教育なんてものは箱ではない、中身だよ。その証拠には日本の高い教育水準はオンボロの校舎の中で達成されているし、そこで学ぶ子供にとっては建屋の美醜などは、実はあまり気にならないものなのだよ」

事実、吉田松陰の例をもち出すまでもなく、今日に至るまで私は、校舎への設備投資と生徒の出来との間に明瞭な相関関係があるという報告を読んだことはないし、またあるとも思えない。教育施設の充実が、今日に至るまで教員共通の願いであったのは、カネの話をすることによって「教員の質と生徒の出来」という、より直接的相関のある本質的な問題から衆人の目を離しておくための一つの戦術であったからであろう。