プレゼンの資料も、相手がそのまま社内会議に使ったり稟議書に添付したりすることを想定して作成したい。決裁に関わる人すべてに対して、自分が直接アピールできるわけではない。自分がその場にいなくても、切り替えることによるメリットがきちんと伝わるように、それぞれの立場の人向けにメリットを整理しておこう。

ただし、プレゼン時は資料に頼ってはいけない。資料を読み上げて終わりというプレゼンは、相手の印象に残らないものだ。「これまでのところで何か質問はありませんか」とときおり質問を投げかけ、顧客の意識を自分の話に向けさせる工夫をしたい。

営業担当者は避けたがるが、プレゼン時には切り替えにかかるコストについてもきちんと言及しておくべきだ。とくにBtoBの場合は切り替えにかかるコストが大きく、顧客もその点を心配している。費用についてはいずれ必ず質問されるので、最初から顧客と共有しておいたほうがいい。

「初期費用として○○○円かかりますが、維持費はいまご利用中のA社の商品と比べて年間○○○円安くなります。2年で初期費用を回収できます」というように、切り替えによるメリットとコストをセットで話せば、コストについての事実も伝えつつ、負担感をやわらげることができるはずだ。

コストのほかにも、プレゼン中に「ところで、○○についてはどうなの?」と、顧客から疑問点を指摘されることがある。このとき「後で説明します」と答えてはいけない。

顧客の「ところで」という投げかけは、「聞きたい話はそこじゃない」「このプレゼンはつまらない」という顧客からのサインだと受け止めたほうがいい。プレゼンは顧客の聞きたい順番で話すことが鉄則だ。

もちろん自分なりに話の流れを想定して準備してきているはずだが、顧客から途中で疑問を投げかけられたら、臨機応変に対応して疑問を解消してから次に進みたい。

(構成=村上 敬 撮影=鷹尾 茂)