細川護煕内閣では首相秘書官だった成田憲彦・内閣官房参与兼駿河台大学教授。

消費税増税法案をめぐる攻防はこれからが本番だが、8~9月に民主党代表選、13年夏に参院選、さらに13年8月までには解散・総選挙もある。総選挙実施は違憲状態の「一票の格差」是正が前提となる。一連の選挙に、選挙制度改革、増税法案の成否、野田政権の命運が絡み合う展開となるのは間違いない。

第一の関門の3月末を前に、野田は谷垣との密談実行作戦に出た。もちろん「民・自連携」による局面打開が狙いだが、第一ラウンドにすぎない。

野田の本音はどこにあるか。決定済みの「社会保障と税の一体改革」の素案で示した「14年4月の消費税率8%」は絶対に譲れない死守ラインと考えているのではないか。首相の相談役を引き受けている成田憲彦はこんな展望を述べる。

「重要法案はだいたい会期延長か継続審議になるから、6月が山場になるとは見ていない。増税法案廃案なら解散というのは、そう考える人の勝手な思い込み。廃案なら再提出すればいい。総選挙は代表選の後にすべきだと思う」

成田は野田への助言を披露する。

大平内閣では官房副長官、橋本龍太郎内閣では幹事長だった加藤紘一氏。

「腹が据わっていて、懐が深い。自分の信念の部分と人の話に耳を傾ける部分のバランスが取れた人です。本人は奇手を使うのでなく、誠実に訴えれば、消費税増税も理解されるし、野党も協力せざるをえないとまじめに思っている。だが、ほしいのは最後の戦略性。民主党の不慣れな部分だけど、まだ詰めた政治カレンダーがない。それが必要です」

「14年4月実施」が死守ラインなら、そこから逆算して、最悪の場合は増税法案成立を13年後半まで先送りしても間に合う。そんな政治カレンダーを想定することもできる。もしかすると、野田は今国会での法案成立に拘泥せず、来夏の参院選の後までという長期戦を視野に入れている可能性もある。であれば、「したたかな泥鰌」と評することもできる。

最大の課題はカレンダーどおり13年後半まで政権を維持できるかどうかだ。政治歴の長い加藤紘一が言い添えた。

「いまの野田内閣は財務省内閣でしょ。国民はわかるんですよ。役人ぽくなったなあ、と。そこから抜けて、野田首相が一野人政治家として勝負してくるのを待っているのです。増税をしなければ、と思っているのは、みんな同じだから」

政権に就いて半年、政治家としての真贋が見えてくる日は近い。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(尾崎三朗=撮影 PANA=写真)