右肩上がりの業績を意図的に下げる

社員の平本大は創業者の息子だが「評価は一般社員より厳しいくらい」。

会社を永続させるため、ときには大胆な手法が断行されることもある。創業から四半世紀近く経ったとき、ほぼ右肩上がりで業績を上げてきたメガネ21の中には、リスクをとらずに高給をもらえて当たり前と錯覚する社員が出てきた。一種の「大企業病」だった。

「『株式上場すれば儲かるのに』という人もいますが、上場した後に入ってきた社員はなんの得にもならないでしょう? それより利益が出たら社員で分け合う、商品もどんどん値引きしてお客様に喜んでもらう。そのほうがみんな幸せになれるじゃないですか」

そこで経営陣は、08年初頭に、商品価格を大幅に値下げすることで営業利益を意図的に落とし、社内預金の金利も10%から3%に下げた。当然、業績に応じて分配される給与も一気に下がった。

「危機感を持たせるための補整措置、いわば第二創業期です」と平本は語る。実はこのとき、もっとも給与が下がったのはほかならぬ経営トップである。経営陣が最初に痛みを引き受けることで、若手に誠意を示したのだ。

「第二創業期」の約半年後、リーマンショックによる大不況が日本を襲った。いち早く大バーゲンを行っていたメガネ21では、顧客離れを食い止めることができた。

未曾有の不況と過当競争に疲弊した大手眼鏡チェーンが次々と広島から消えていく中、社員の笑顔を守ることに懸けたメガネ21は、会社を守ることにも成功したのだ。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(小林禎弘=撮影)
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