増田 奏 (ますだ すすむ)建築家
関東学院大学 人間環境学部客員教授

1951年、神奈川県横浜市生まれ。1級建築士。
77年、早稲田大学大学院修士課程修了。同年より86年までの9年間、「住宅設計の第一人者」故吉村順三氏の設計事務所に勤務。86年に独立、横浜市に建築設計事務所SMAを設立し、住宅設計を中心に活動。87年より関東学院大学工学部、日本大学生産工学部などで建築計画・建築設計の非常勤講師を歴任。
著書『住まいの解剖図鑑』は現在5万部を超える人気の書籍となっている。

技術の進歩で便利な設備機器が次々と開発され、私たちの日常生活は確かに便利になった。もちろんありがたいことに違いないが、家族が日々の暮らしを営み、生命を育む「住まい」に何より大切なのはその場所が「心地よい空間」であること。「心地よい家」をつくるための基本を聞いてみた。

心地よい家のプランは
「引き算」でつくる

心地よい家を建てるために、まず必要なことは、家の骨格と空間構成がしっかりとしていて理にかなっているということだ。最近ではさまざまな住宅設備が発達しているので、家の造作がずいぶんまずくても、それをカバーしてくれる。しかし本来は四季の変化や高温多湿の風土に合わせ、冷暖房にあまり頼らなくても、基本的に夏涼しく、冬暖かい家をつくるべきだ。

私たち建築家は家の心地よさは、まず建物の骨格や空間にあると考え、「プロポーションのよい家」をめざす。すなわち構築物としてバランスが取れているということ。例えば狭い部屋であれば、天井が低くても心地よさは保たれる。逆に部屋が広ければ、ある程度天井が高くないと心地よい空間にはならないだろう。つまりちょうどよい寸法、バランスというものがある。そして夏は日差しをさえぎり、冬は日光を十分に室内に取り込んで、風が室内を通り抜けられるようにする。それが心地よい空間の基本的な条件だ。