柏原竜二 かしわばら・りゅうじ●1989年、福島県生まれ。小学生時代はソフトボールに取り組むも、球技音痴のため中学から陸上を始める。いわき総合高校を経て東洋大学に進学。卒業後は富士通で競技生活を続ける。ツイッターが人気で7万人を超えるフォロワーがいる。
【愛読書】『GIANT KILLING』(ツジトモ著)『夜桜四重奏』(ヤスダスズヒト著)
【箱根のスタート前に聞く曲】ジェットロケット(LiSA)
【好きな食べ物】甘いもの。魚の煮物以外なら何でも
【苦手なこと】段取り
(PANA=写真)

3年生は多難な1年だった。

まずは右膝の故障に苦しめられる。10月の出雲駅伝(全日本大学選抜駅伝競走)は欠場、11月の全日本大学駅伝対抗選手権でも区間4位と振るわなかった。

故障に加え、気持ち的なものもあった。柏原は経済学部の学生であるが、学部は都内の白山キャンパスにある。鶴ヶ島から電車通学していたが、授業はきちんと出る学生だった。競技者である前にまず一学生でありたいと思ってきたからだ。

部活動は早朝と夕方の2度。通学の時間帯は朝練後の貴重な睡眠時間でもあるのだが、車中で、柏原さん、と声をかけられる。揺り動かされて起こされるときもあった。街中を歩いていても常に人の視線がある。3年生となると随分と顔が知られるようになっていた。知り合いに声をかけられるのは一向にかまわないのであるが、見知らぬ人に踏み込まれるのは苦手であった。

さらに、チームメートとの関係がしっくりいかない。エースランナーとは、頼られる存在である。過剰に頼られるとつい、「おまえさんたちも頑張れよ、人に頼んなよ」と思ってしまう。

それやこれや、いろいろとあったが、箱根駅伝の前には立ち直っていた。チームメートは自分の復活を待っていてくれた。「5区はおまえしかいない」と言われると、ここで踏ん張らないと男じゃないとも思った。