2021年にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2021年11月29日)
老後の資金は“何歳まで生きるつもり”で用意すればいいのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「私がキャッシュフロー表を作成するときには、寿命は90歳としています。でも、リアルに受け止めない方が多いんです」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

孤独なシニア女性
写真=iStock.com/izusek
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日本人女性の平均寿命は87.74歳

日本人女性の平均寿命は世界一位の87.74歳、男性は81.64歳で世界二位。ここ数年、毎年のように過去最高を更新している平均寿命ですが、翻って、今この記事を読んでいるあなたは、自分が長生きすると思いますか。長生きが当たり前になった今でも、自分が90歳まで生きることを想像できる人は多くない気がします。

今回はそんな「寿命の読み違え」によるご相談例を紹介します。

「老後2000万円問題」が話題になったことがありましたね。これは夫65歳、妻60歳から夫婦ともに無職の場合、老後30年の間に2000万円が不足する、というものです。2019年にこの試算をした金融庁がライフプランの最末期の年齢として用いたのも、「夫95歳・妻90歳」でした。

私がお客さんのキャッシュフロー表を作成する際も、寿命は90歳としています。……が、皆さんかなり半信半疑。「日々のハードワークからしてそんなに生きるはずがない」「うちの家系は短命だから」と、リアルに受け止めていない方が多いです。

しかし日本人の4人に1人が90歳以上生きるとも言われている今、「人生100年時代」はかなり現実的な話なんです。

老人ホーム入居中に貯金が底をついた90歳女性

武藤喜久子さん(仮名/78歳)が私のもとに相談に来たのも、まさに「寿命」が原因でした。

彼女には老人ホームに暮らす姉の畠中富さん(仮名/95歳)がいるのですが、そのお姉さんの寿命を読み違えてしまったことで、老人ホームの資金がショートしてしまったのです。

富さんが老人ホームに入ったのは80歳の時のこと。施設の一時金は400万円で、月額料金は30万円。一時金が抑えられているかわりに月額料金が高めに設定されている、高級な部類の老人ホームでした。

富さんのお金は、毎月の年金7万円と2500万円の貯金。当然、年金だけでは老人ホームの月額料金をまかなえないので、残りの23万円を貯金から切り崩して支払っていくことを決め、施設側の審査も無事に通って入居となりました。

しかしその10年後、富さんが90歳の段階で貯金が底をついてしまったのです。

なぜこんなことが起きたのか? そう、答えは「寿命」です。

妹の喜久子さんも富さん自身も、「人生は85歳くらいまでだろう」と予想していました。そして最期くらいはゆったりと気に入った空間で過ごしたい、過ごさせてあげたいという気持ちから、姉妹で話し合い、少し値の張るこの老人ホームへの入居を決めたのです。

この問題、結論から先にお話しすると、富さんは生活保護を申請し、前よりもだいぶグレードの落ちる、月10万円(居住費のほか、食費、日常生活費など込み)の老人ホームへ移ることになりました。