ジェットスター・ジャパンは、当初の計画を5カ月も前倒しし、2012年7月3日から就航をスタートする。就航都市は、成田を拠点に関西、札幌、福岡、那覇の4都市。代表取締役社長の鈴木みゆき氏は「同じ日時、同じ条件で空席があれば、他社を下回る価格で提供する。原価割れもいとわない。ジェットスターはプライスセッターになっていく」と宣言した。自信の根拠はどこにあるのか。

1つには、これまで培ったノウハウの活用だ。ジェットスターは空港使用料が高いオーストラリアやシンガポールで利益を上げてきた。同じように使用料が高い日本にノウハウを移植し、利益を出していく計画だ。2つ目はジェットスターグループのスケール。機材から備品、燃料や着陸料の交渉までグループでまとめて行えば、条件は有利になる。

豊富なノウハウとスケールメリット。親会社とのカニバリゼーションをできるだけ軽減しながら、グループで儲けを出すノウハウ。これこそ、JALがジェットスター・ジャパンと手を組んだ理由にほかならない。ジェットスター・ジャパンは、JAL、三菱商事、ジェットスターの親会社であるカンタスグループが3分の1ずつ出資しているが、JALは投資しても口は出さない主義を貫くという。

FSAの手法とは一線を画す。これは3社に共通する方針だ。FSAにいかに無駄が多いのかを各社とも自覚している証左といえる。徹底した低コストを追求する日本版LCC。だが、それは生き残りの絶対条件ではない。

「低コストを実現したのに破綻したLCCの例は多い。重要なのは低コストに加えて、搭乗率を上げること。さらに経営者の理念を浸透させることです」(紀氏)

FSAの搭乗率は60%台だが、成功しているLCCは75%以上をコンスタントにキープしている。ピーチの目標も75~80%。エアアジア・ジャパンも80%を掲げている。

しかし、この数字は新たな需要を喚起してはじめて実現する。ライアンエアーはアイルランド-イギリス間のフェリー客200万人やヨーロッパのユーロライン(鉄道)の利用客を、エアアジアはマレーシアの島々からクアラルンプールに移動するフェリー客を取り込んだ。対して日本はどうか。紀氏は言う。

「日本の空を派手な飛行機が飛ぶインパクトはあります。LCCの登場を印象づけますからね。ただ、スカイマークと同じくらいだなという程度の価格では、長距離バスやJRから客を奪い、新規需要を開拓するのは難しい。インパクトのある価格でも枚数が制限されていたら意味がない。量が必要です」