「飛行機代が安くなるのは嬉しいけど、安全性は大丈夫なの?」率直な不安の声に、LCC参入者たちは口を揃える。安くできるのはきちんとした理由がある、と。「激安でも利益が出る」ビジネスモデルの謎に迫る。

2012年3月1日。この日を境に日本の空は変わる。変革の主は日本生まれのLCC(ローコストキャリア)だ。

先陣を切るのは、社名の「桃」をイメージし、機体をピンクに塗装したピーチ・アビエーション。7月にはオレンジの星が印象的なジェットスター・ジャパンが、8月からは真っ赤なカラーが目を引くエアアジア・ジャパンが就航する。ピンク、オレンジ、レッド。鮮やかな飛行機が日本の空を塗り替えようとしている。

LCCというと、パイロットは人件費の安い国の人材を採用し、機材は大手のお古を使い倒す「安かろう、悪かろう」のエアラインというイメージが強く、ぎりぎりの利益しか出ないビジネスと見る向きも多い。だが、それは誤りだ。価格は確かに安い。現在、関空-札幌路線の運賃はJAL、ANAともに横並びで、片道9800~4万1300円。

対して、ピーチの同じ路線は片道4780~1万4780円。ジェットスター・ジャパンも、従来と比べて最大50%安い運賃を提供し、最低保証価格制度(同じ日時・条件で他社が安いことを証明すればそれを下回る価格で提供する制度)を導入すると発表している。最後発のエアアジア・ジャパンも同じ価格帯になると見て間違いない。

しかし、安さだけに目を向けるとLCCの本質を見誤る。飛行機はいずれも新造機で、B747やA320の操縦経験のある日本人のベテランが操縦桿を握る。何より、薄利多売のビジネスではない。利益率はむしろFSA(フルサービスエアライン=既存の航空会社)以上だ。10年のエアアジア(マレーシア)の売上高営業利益率は27.1%、ライアンエアー(アイルランド)が13.4%。一方、JALは13.8%、ANAは5.0%。LCCが世界の空を席巻しているのは、FSAの半額で販売しても2倍の利益を生み出す仕組みを構築しているからである。

※すべて雑誌掲載当時