とりあえず座って、脱抑制。(写真=PIXTA)

言葉を発するということは、本来苦労して「押し出す」ようなことではなくて、むしろ水道の蛇口をひねると水が出てくるような、そんな自然なプロセスである。うまく「抑制」を外してやれば、あとは自然に言葉が出てくるのである。大抵の人は、難しく考えて抑制を外せないでいる。

そうは言っても、書くことがないという人がいるかもしれない。しかし、そもそも内容があらかじめわかってなければ書けない、というのが間違った思い込みなのである。

私がお世話になった英国ケンブリッジ大学のバーロー教授が、あるとき面白いことを言った。文章が書けないで困っている学生が、「自分が何を考えているのかわからない」と嘆いていたら、一言、「書いてごらん。そしたらわかるよ」と声をかけたのである。

さすがは、私の尊敬する脳科学の大家。「書いてごらん。そしたらわかるよ」。この言葉には、脳が言葉を生み出すプロセスについての、深い洞察がある。

何を書こうと、悩むのはもったいない。とりあえず座って、脱抑制してみる。そのこつさえ掴めれば、自分の脳から流れ出てくる言葉の列に、びっくりするはずだ。

現に、私はそんなふうにしてこの文章を書いている。

(写真=PIXTA)