日本経済の復活にはなにが必要なのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「人工知能が生活を支配する未来は近い。開発をめぐる『性能』と『安全保障』の問題を解決するためには、日本政府が『国民100万人から個人情報を買い取る』という計画を進めるべきだろう」という――。

※本稿は、鈴木貴博『日本経済 復活の書』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

夜のパトカー
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ロンドンの街角で起きる“職務質問事件”

巨大IT企業であるGAFAM、すなわちグーグル、アマゾン、メタ(旧フェイスブック)、アップル、そしてマイクロソフトが人工知能の未来を牛耳っていると言われます。2030年までには我々人類の生活はそのかなりの部分を人工知能がコントロールするようになると予測されます。

ところが、実は彼らGAFAMの育てる人工知能にはある問題が発見されています。事の発端はロンドンで警察と市民団体の間で起きた騒動です。

にぎやかなエリアでロンドン市民が普通に歩いていると突然、警察官に呼び止められます。日本でいう職務質問を受けるのですが、たいていの場合は何事もないことがわかり警察官から「行っていい」と言われて解放されます。

すると次に市民団体の人が解放された人に「今、何が起きたのかを説明させてほしい」と言って近づいてきます。その人は近くにあるおかしな突起物がついた警察車両を指さして、「あの監視カメラがロンドン市民をチェックしていて、人工知能がテロリストである可能性があると判定した人を呼び止めているんだ」と教えてくれます。

人工知能が未来に引き起こす重大な問題とは

中にはまだ高校生なのに長時間、警察官にチェックされた人もいて、警察は何も教えてくれなかったその一時拘束の理由が、自分がテロリストかもしれないと疑われたことだと知ってショックを受けるのです。

市民団体がこの監視システムを逆監視している理由は、一つは法的な根拠なしにロンドン警察が人工知能による監視システムを試験導入していることですが、逆監視行動の中で判明したもっと恐ろしいことがあります。市民団体が目撃したところによれば、間違って監視に引っかかるロンドン市民の多くが有色人種だったのです。

ここでお話しする人工知能についてのエピソードの多くは、ネットフリックスの複数のドキュメンタリー番組で紹介されたものです。人工知能がこれから引き起こすであろう未来の社会問題についてはさまざまな角度からの問題提起がなされていて、人工知能の偏見はその一つの大問題です。