さて、寡占以外の状態にあって市場が成熟し、シェアが硬直化してしまった場合はどうか? これはこれからの市場戦略の最も基本となるケースであろう。戦術的な方策としては、カバレージを増したり、広宣費を増したり、値引き幅をいじる、ということが考えられる。また、特定地域に集中するということもできるだろう。しかし、このような戦術の投資効果は小さいし、これによって得られるシェアも決して「飛躍的」とは言い難いのが常である(もちろん、成長期には、これらを積極的に組み合わせて、一時的に大きなシェア増加を目指し、以後これを維持する、という方策もとられた)。

私は、成熟し、硬直化した市場で、戦略的解決を見出す場合、まず対象となっている製品市場における常識に徹底的に挑戦する、という方法をとることにしている。「常識」あるいは「既成概念」というものは、成熟するまでの市場では、成功するための条件そのものになっていた場合が多いものである。しかし、今、その成熟に伴う硬直化を破ろうとするなら、しかも「飛躍的」に破ろうとするなら、「常識」となっている事柄でさえ、あえて破らなくてはならない場合だってある。(中略)

このような発想は、ひとたび身についてしまえば、誰にだってできるはずのものではなかろうか。問題は、むしろ、常識に挑戦する代替案が出てきたとき、どのくらい執拗に商品化、あるいは商業化するか、ということのほうが成功への岐路になるのではないか。