フューチャーセンターの成功は、参加者の期待感にかかっています。

野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa

「これだけ多様で面白い人たちが集まっているから、今日は何かが起きるぞ、面白いアウトプットが出るかも知れない」、と皆が思って集まれば、そこでは何かマジックが起きるはずです。

では、そのために「おもてなし(ホスピタリティ)」ができることは、何なのでしょうか。どんなおもてなしをすれば、そのような期待感を高めることができるのでしょうか。

石川県和倉温泉にある老舗旅館、加賀屋さんでは、おもてなしを「宿泊客が求めていることを、求められる前に提供すること」と定義しているそうです。そして、「できるだけ長い時間を宿泊客との対話に費やす」という原則を持ち、それを実現するための仕組みとして、食事を運ぶためのコンベアがあります。仲居さんが食事を取りに行く時間を最小化し、対話時間を確保するためのシステムです。

フューチャーセンターのおもてなしには、ワクワク感を高めること、あたたかく迎えられたホカホカ感を味わえるようにすること、主体的に参加できたという参加した感を満たすこと、などがあります。加賀屋さんのように定義してみるとすれば、「参加者一人ひとりが潜在的に求めているワクワク感、ホカホカ感、参加した感を、求められる以上に提供すること」と表現できるのではないでしょうか。

私がオランダの「カントリーハウス」というフューチャーセンターを初めて訪れたとき、フューチャーセンター・ディレクターは、まるでペンションのオーナーのように私たちを出迎えてくれました。玄関の脇にウェルカムルームがあり、そこにはたくさんの種類のティーカップが並んでいました。自分でカラフルなカップを選んで、おいしい紅茶とクッキーをごちそうになりました。普通に他社訪問するのとは、まったく違う期待感が高まったことは、想像に難くないでしょう。

フューチャーセンター・セッションに出向いていった時に、そこに今まで経験したことのない雰囲気があり、上質な対話とともに、美味しいお茶やお菓子気を楽しむことができたならば、もう一度そこを訪れたくなるに違いありません。