直行便の飛行機が行き交いはじめた

――2008年、馬英九政権に移行してから、中国との良好な関係が表面化してきました。

中国大陸と台湾の「両岸三通」(通郵・通商・通航の自由化)が実現し、台湾経由で中国に出られる可能性が大幅に広がりました。2008年8月には台湾の閣議で「搭橋専案(橋づくりプロジェクト)」が推進されることが決まり、中国との有効な交流実現と意見の掌握を進めています。

「初年度は交流、2年目は商談、3年目は協力」を目標に、さまざまな活動を推進しています。

今のところ両岸で価値の高い産業である「漢方薬」「ソーラー発電」「航空」「風力発電」など15項目の技術において、統一規格がつくられる予定です。

さらに2009年、中国と両岸経済協力枠組協議(ECFA)を結びました。現在、台湾にとって中国は最大の貿易相手国であり、台湾からの輸出は年間1000億ドル、輸入も400億ドルに達しており、100億ドル以上の投資も行っています。しかし、貿易障壁や経済交流制限も存在するため、政府間でこれらを取り除くための協議関係を結んだのです。

これによって台湾の中国企業への投資可能額は40%から60%にまで引き上げられました。また、2009年の6月30日から中国企業の台湾への直接投資が一部開放されました。有名な北京ダックのお店が台湾に参入したいという案件はお断りしましたが(笑)、中国も積極的に台湾への参入を活用しようとしています。

台湾と中国との間で、これまで制限されていた直行便の飛行機や船が行き交うようになりました。うまくいけば多くの原材料が中国へ直接輸出できるようになりますし、最終的に多くの項目の関税が撤廃されて、名実ともに台湾が中国のもっとも有力な進出拠点となれるでしょう。

――今後、日本が台湾企業と連携して中国やアジアに打って出るとしたら、何かアドバイスはありますか。

現在は、一つの国、一つの企業が一人勝ちをする時代ではありません。多くの人間が持っているものを持ち合い、補完関係を構築すべきです。我々は、近年の日本についてはカーナビ、エコ、そしてバイオ医療・薬品といった技術やサービスに特に注目しています。

日本人は歴史的な背景で、アジアにおいていろいろな誤解を受けていますが、いい意味の日本人を理解している台湾人は少なくありません。日本の高い技術と、台湾の中国やアジアにおけるビジネス力を結びつければ、きっとアジア、そして世界の中でやっていけると思います。

お金だけで世界を従えることはできません。これは、経済力を持った国がつねに犯す過ちです。今後は、技術力や創造性、そして教育力や道徳観が重視されるでしょう。そんな部分を伝えるには言葉の力が必要です。英語と中国語が今後、世界で最も重要な言語になると思いますが、気持ちや感情を伝えられるだけの語学力が今の日本人に足りないところかもしれません。そんな中、多くの台湾人はできるだけ日本語で日本人を理解しようとします。そんな意味でも中国への心強い水先案内人になれると思います。

(藤 重太=インタビュー・構成 澁谷高晴=撮影)