中国の急激な台頭はアジアの脅威になるか

――台湾の強みや日本との違いについてはどうお考えですか。

以前、中国は我々にとっていわゆる政治的脅威でした。台湾企業の中国進出そのものも、一時は台湾経済の空洞化を招く危険性がありましたが、そこは同じ中華民族としてのビジネスセンスと国際感覚でうまく対応してきたと思います。

台湾企業のほとんどは中小企業なので、特定の企業の失敗が国の経済に大きな影響を及ぼさないことも考えようによっては利点ですし、逆に力のない企業の淘汰も頻繁に行われ、経済全体の活性化にもつながります。

ある日本人から聞いた話ですが、日本人は新しいビジネスプランについて、まずできない理由を探し、成功しないという仮定で話を進めるそうです。しかし、中国系の人々はまず「どのくらい儲かるか」「どうすれば儲かるか」といったことから話し始める。ですから、日本で実現しなかったアイデアや商品を、台湾人が実現したことも少なくないのです。それを聞いた日本人は「ええ、あんな企画、本当にやったの?」とよくも悪くも感嘆するそうです。

台湾は政府が積極的に企業のイノベーションを支援しているからかもしれませんが、日本で実現できないようなアイデアを台湾で実行してみることも一つの連携の形かもしれません。

――中国との関係は、ビジネスにおいて大きな懸念となるのではないでしょうか。

72年に日本と台湾が国交を断絶した際、日本は政治的にも経済的にも断固たる態度をとり続けました。しかし、こういったことは中国人にとっては少々理解しがたいところでもあります。大陸の中国人にしても台湾人にしても、政治的な面子は堅持しますが、一方で、合理的だと考えた部分については、いたって柔軟に対応するものなのです。

要するに、政治的に緊張状態であっても、経済においては協力したほうがいいと思えば「テーブルの下」で話が進んでいるのです。台湾と中国はすでに20年以上も前から、政治と経済は分けて、持ちつ持たれつの関係を保ってきました。

日本の方は政治と経済を同じように見るのですが、少し見る角度を変えてみるべきかもしれませんね。