内田浩二●鉄道事業本部設備部長

ただ、東北新幹線の設備は広範囲に甚大な被害を受けていた。高架橋柱などの損傷が約100カ所、電化柱の折損・傾斜・ひび割れが約540カ所、架線の断線が約470カ所など被害個所は合わせて約1200カ所にも上った。だが、鉄道事業本部設備部長の内田浩二は当時の状況についてこう語る。

「新幹線の高架橋と仙台付近の設備については、ひどい被害というのは予想していました。だんだんと点検が進むに連れて、やはり予想通りの被害が報告されてきましたが、04年10月の新潟県中越地震のときと比べると予想したほどひどくなかったという感じでした」

JR東日本は、阪神・淡路大震災後の国の指示などを受けて(1)高架橋など構造物の強化、(2)地震検知システムの改良、(3)脱線しにくい車両の開発――の3つの作業を地道に続け、大地震の発生に備えてきた。東北、上越、長野、秋田、山形の5つの新幹線にある高架橋は合計約5万本。このうちの約1万8000本について、高架橋がポキッと折れて倒れてしまう「剪断破壊」を防ぐ耐震補強工事を終わらせていた。地震検知システムの改良は前述した通りだ。こうした努力が実を結び、死者はおろか、大きなけがをした乗客さえ一人も出さなかった。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(矢島宏樹、桜井義孝、奥谷 仁、小倉和徳=撮影)