ティーパーティ運動は、70%前後が40歳以上の人々によって担われています。有権者の平均年齢より高い世代です。米国の年配者は、政府が小さかった時代を生きてきました。自ら努力して非常に一生懸命働いてきた経験を持っているのです。豊かになりたいのであれば真剣に働かなければならない。彼らは、努力すれば成功できるという信念を持っています。米国は機会(チャンス)の国なのです。

もちろん、年配者には「私たちは長い間働いて税金を納めてきた。政府はこれだけのお金が戻ってくると約束したじゃないか」という不満を持っている人がいます。しかし、彼らの多くは、増税をし、国の関与を増やすことで、愛する自分の子どもや孫たちの自由が失われることを危惧しています。だからこそ、自分たちが約束された見返りの一部を犠牲にする選択さえ行うのです。

一方、若い世代は学校や大学で社会主義的な考え方を徹底的に教え込まれています。若者は政府や他人からあまりに多くのものを与えられることに慣れており、それが当然であるかのように振る舞います。若い世代には「自由とは何か」ということをゼロから教えなくてはなりません。とても難しい戦いですね。

ティーパーティのような運動が米国以外でも広がることは十分に可能性があります。米国でティーパーティが広がる理由は自分たちの歴史と自由の考え方が理念的につながっているからです。

日本では、福澤諭吉が「自由」という訳語をつくって広めたと聞きました。私は福澤の理念が、機会の平等、学問の修得、一身の独立の大切さを説いたものと理解しています。まさに、国の独立は自らが政府に頼らずに一人の人間として独立する心によって基礎づけられます。このことは米国も日本も同じです。

日本のみなさんも、自国の歴史を思い起こして、人々の心や精神の奥底まで自由の考え方を浸透させることが重要です。

また、抽象的な政策論ではなく、個人の生活実感に合ったレベルで政策のよし悪しを判断することが大事です。たとえば「あなたの生活の隅々まで規制が存在していますが、遠く離れた場所にいる知らない官僚にあなたの家庭の食卓に並ぶメニューの塩加減まで口を出されたいですか?」と考えてみてください。答えはNOでしょう。増税をして政府の関与を増やすだけでは、何も解決しません。

※すべて雑誌掲載当時

(渡瀬裕哉=構成 小倉和徳=撮影)