クルマ好きから熱烈に支持される「洗車ユーチューバー」が秋田県にいる。ホワイトシードの村上篤社長は、車体を美しく保つための「手洗い洗車のプロの技」を、動画で惜しげもなく公開している。チャンネル登録者数は約10万人で、全国のクルマ好きが秋田を訪ねるようになっているという。異色の人気チャンネルはなぜ生まれたのか。フリーライターの伏見学さんが取材した――。
ホワイトシードの村上篤社長。隣にあるのは新車ではなく、8年以上乗り続けているクルマ。徹底した手入れが輝きを放っている
筆者撮影
ホワイトシードの村上篤社長。隣にあるのは新車ではなく、8年以上乗り続けているクルマ。徹底した手入れが輝きを放っている

クルマを洗うだけなのに再生回数は225万回以上

「こまめに洗ってあげる方が、クルマのためになりますー!」
「こんなところ、洗車機のブラシ入らないから、もう、そんな感じで洗うんだったら、もっと簡単でいいよね(怒)」

これはクルマ愛好家などに絶大な支持を集めるYouTubeチャンネル「BeautifulCars洗車チャンネル」の中でも、特に再生回数の多かった動画である。その数は225万回以上。仕掛け人はホワイトシードの村上篤社長(47)だ。秋田市に本社を置く同社は、洗車やコーティングといったカーディテイリングの専門店「ビューティフルカーズ」などの事業を展開する、社員10人ほどのベンチャーだ。

今やチャンネル登録者数は9万4000人を超え、村上さんは「洗車ユーチューバー」などと呼ばれている。YouTubeの人気を追い風に、会社の業績もうなぎのぼり。この5年間で売り上げは8倍以上となり、2022年11月期は約4億1600万円を見込む。

売上高10億円が近い将来の目標だが、いずれは100億円の大台に乗せるつもりだ。それと並行して、「秋田から日本の社会課題を解決していきたい」と村上さんは意気込む。その一環として地元事業者のための経営塾を請け負って、人材育成にも力を注ぐ。

「65歳で引退すると決めているんです。あまり時間はない。早くしなければ」

生き急いでいるように見えなくもない。なぜそこまで全速力で走るのか。そこには18年前に他界したわが子に対する、父親としての使命感があった。

カーレーサーの夢

1974年8月に秋田市で生まれた村上さんは、地元の名門・秋田高校を卒業後、新潟工業短期大学に進み、新潟大学への編入を経て、国家公務員になった。

ところが、わずか2年で退職。そこから転職を繰り返し、2012年にホワイトシードを創業するという、ユニークな経歴を持つ。