多様性のスウェーデンで移民の暴動が相次ぐ

4月半ば、ヨーロッパでイースター休暇が始まっていた頃、スウェーデンのあちこちで暴動が起こり、警官が襲われたり、自動車に火がつけられたり、学校が燃えたりした。ドイツの主要メディアは、「右翼のデモを認可したら暴動が起こった」と報道したが、これは部分的にしか正しくない。暴動の主勢力は右翼ではなく、移民だったと言われる。

これを聞いて思い出すのが、15年ほど前にフランスのパリ郊外で、移民の第2、第3世代によって引き起こされた大規模な暴動だ。当時、現地では公共施設が破壊され、9000台の乗用車に火がつけられた。公道に集まった若者たち(旧植民地だった北アフリカ系)は完全に戦闘モードで、辺りは3週間ほど内戦のようになった。

スウェーデンは人口が少なく、人口密度も低いので、パリ近郊のような騒動にはならないにせよ、ショックだったのは、これまでこの国がマルチカルチャー社会の模範国として知られていたからだ。人口あたりの移民の数はEUで最高。国民国家など時代遅れという考え方が基本にあった。難民として入ってきた人は永住を認められ、最初から移民に等しかった。要するに、世界一と言ってもいいほどリベラルな移民政策を敷いていたのがスウェーデンだった。

2022年4月21日、ウクライナ西部リビウの駅で列車を待つ人々。ポーランドなど避難先へ向かおうと大勢詰め掛けた
写真=時事通信フォト
2022年4月21日、ウクライナ西部リビウの駅で列車を待つ人々。ポーランドなど避難先へ向かおうと大勢詰め掛けた

「移民反対」に転換せざるを得なくなった

ところが、その理念が徐々に壊れ始めてすでに10年以上。一部の移民がスウェーデンの文化に適応できず、しかも豊かな社会福祉制度にぶら下がったままで何十年もいる。しかし一番の問題は、移民やその2世によって犯罪組織が構成されたこと。次第に殺傷事件が頻発するようになり、発砲事件は2021年だけで342件。マフィアのいるイタリアよりも犯罪率が高いという。

かつてはやはり移民を歓迎していたノルウェーやデンマークは、とっくに方向転換をしている。決定的に変わったのが2015年秋、ドイツのメルケル首相が中東難民を無制限に入れた後だ。デンマークでは伝統的に移民導入賛成派だった社会民主党が、「移民政策は右翼と共に、経済政策は左翼と共に」というビックリ方針を掲げ、2019年の選挙で首相の座を勝ちとった。

またスウェーデンでは、現在の与党である社会民主労働党が、安全な国を取り戻すという公約を守れなかったという批判が高まっており、今年9月の総選挙の行方が注目されている。