どこで荷を積み、どう荷揚げするのか

当社にはもともと、半年間の新入社員研修プログラムがあり、倉庫など実際の現場で働いてもらっています。以前は研修を終えると、営業や経理、情報システムなど、それぞれの配属先に散っていくのが通例でした。2010年からはそれを改め、新入社員研修を終えた後に、船舶運航管理の実務を任せることにしました。

運航管理は、どこで荷を積み、どこでどういう条件で荷揚げするのか、どこでどれくらいの燃料を積むのかといった運航スケジュールを船に指示する仕事です。入社して2年間は、この業務の経験を全員に義務づけました。

運航管理を経験後、さらに倉庫やトラック輸送などの現場を経験してもらいます。このように新入社員の段階から現場を徹底的に勉強してもらう仕組みに変えたのです。

幸い当社には、ありとあらゆる現場があります。船はもちろんですが、航空会社、貨物輸送会社、倉庫会社、トラック輸送会社など、さまざまな現場がそろっています。そのようなグループのメリットを生かせば、人材交流などの形でいくらでも学びの場を増やすことも可能です。

多彩な経験を積むことで、多くの知恵が生まれます。例えばベトナムからヨーロッパに荷物を輸出したいとお客様から依頼されたとき、特定の港に一括して荷揚げして、そこからトラックで配送するのか、各国の港に直接荷揚げしたほうがいいのか。荷揚げするにしても、どこの通関が最も効率的なのか……。多くの現場を身をもって経験するからこそ、アドバイスが即座にできるようになるのです。現場の経験が豊富になると、お客様との商談でも迫力が違います。経験に裏打ちされた知識が自信につながっていくからです。

ある日本の自動車メーカーがインド進出する際、日本から半完成品を輸出することになりました。現地ですべての部品をそろえることができないためです。ところが、工場は最も北寄りの内陸部につくるため、どこで荷揚げすればいいのかがはっきりしません。当時のインドは、鉄道も道路も港も整備が遅れていました。そこで当社はパキスタンに近い港を提案しました。先方の担当者と二人三脚で知恵を絞り、現地工場は無事に立ち上がりました。