消費税増税関連法案の取り扱いをめぐり、野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁が極秘会談していたことが発覚。民主、自民の大連立や話し合い解散がクローズアップされているが、これに素早く反応したのが橋下徹大阪市長だ。

橋下氏が代表を務める「大阪維新の会」は選挙公約として消費税増税を打ち出していたが、野田・谷垣極秘会談が明るみに出た途端、橋下氏は消費税増税反対に転じたのだ。自民党中堅議員が話す。

「維新の公約集『船中八策』には、消費税増税と明記されているが、極秘会談後の3月4日、橋下氏はフジテレビの『新報道2001』に出演して“今のような状況で消費税率を上げるのでは絶対に国民はついてこない”と発言し、野田首相の消費税増税路線を批判したのです。橋下氏は、極秘会談の目的を既成政党による橋下潰しと判断。“橋下包囲網を敷くなら、こちらは反消費税増税を掲げて小沢一郎民主党元代表らと共闘して戦うぞ”と首相らをけん制したのです」

橋下氏は「消費税の引き上げは必要だが今すぐではない」との論理で、消費税増税論者の野田・谷垣両氏との間に対抗軸を設定。「民自が手を結ぶなら維新は敵に回ると脅し、連携に楔を打ち込む戦略に出た」(同前)というのだ。

「橋下氏の唯一の弱点は、総選挙への準備が整っていないこと。民自が早期解散で合意するのは困る。反消費税増税発言は早期解散阻止が狙いでしょう」(全国紙政治部長OB)

毎日新聞の世論調査によると、維新の国政進出に「期待する」と答えた人は61%。創価学会の世論調査でも、定数29の衆院選比例代表近畿ブロックで維新は11議席程度を獲得すると予想(民、自各5議席)。維新の勢いは止まらない。

橋下維新を敵に回して総選挙を戦うことは、既成政党にとって大きな脅威。このため民主党では、前原誠司政調会長が窓口になって橋下氏と会談を重ねたり、橋下氏が唱える「大阪都構想」実現に向けた法案の今国会提出を模索するなど、維新の取り込みに躍起になっている。

ところが、肝心の首相には橋下氏と組む気配がない。首相の女房役の藤村修官房長官が記者団とのオフレコ懇談で「維新は金がない。勢いがあるのは今のうちだけ」とこき下ろしたことは、当然、橋下氏の耳にも入っている。

新旧政党の勢いの差は歴然だ。