エディー・ジョーンズ
(ラグビーサントリー監督。日本代表・新ヘッドコーチ)

2月26日、秩父宮ラグビー場で行われたラグビートップリーグのプレーオフトーナメント最終戦にて。

ラグビーのサントリーをトップリーグ(TL)王者に導いたエディー・ジョーンズ監督は、実は世界的な名指導者としても知られている。4月からは日本代表のヘッドコーチに就任する。では「グッドコーチとは」と素朴な疑問を投げかければ、エディーは即答した。「間違いなく、よき観察力を持っているコーチです」と。

母は日本人で、父がオーストラリア人。豪州タスマニアで生まれ、ラグビーに熱中した。小柄な体ながらフッカーとして地区代表で活躍した後、シドニーの高校教師を経て、プロのコーチとなった。豪州、英国のクラブチームのほか、2003年W杯準優勝の豪州代表監督、07年W杯優勝の南アフリカ代表のコーチも務めた。実績は文句なしだ。

サントリーのクラブハウスを訪ねると、エディーはこちらの左胸の小さなバッジに目をとめた。「それは何のバッジ?」とまず、聞いてくる。前回会った時は、「そのネクタイの柄はどこの?」ときたものだ。視線はすべてを見つめている。

エディーは毎朝、6時からのサントリーチームの自主練習にも顔を出している。なぜ、と問えば、「選手にこうやれ、と言うのであれば、指導者がそこにいなければならないからだ」と説明した。

さらには選手を観察するため、ときた。選手の行動やしぐさを見て、性格やコンディショニングをつかむ。もちろん表情も目の輝きもチェックする。40代の時と、50代の今と、コーチとして何が違うのかと聞いてみた。

「観察力でしょ。若い時は自分のことを気にすることが多い。でも歳をとると、静かに周りを観察し、何をしたら効果的なのかを考えるようになってきた」

そういえば、エディーは試合中、必ず、グラウンドの隅に立つ。ラグビーでは通常、指導者はスタンドに座るのだが……。これもまた、選手のプレーやコミュニケーション、エネルギーのレベルを観察しやすいからである。

(小倉和徳=撮影)