ホンダの社是「人間尊重」とは

ところで、CR-Zの発売にゴーサインを出したのは現社長の伊東孝紳である。自らハンドルを握り、「お、いいね」といいながらタイヤを鳴らして上機嫌で栃木のテストコースを走り抜けた。クルマを降りてから、同乗していた友部にいたずらっぽく「ハイ、合格です」と笑いかけたところをテレビカメラが追いかけていた。

かつて研究所の同僚だった伊東と友部は同年で、ゴルフ仲間でもある。京大大学院出身の社長と工業高校卒の友部が、わけへだてなく肩を叩き合っている。

ホンダの社是のひとつは「人間尊重」。OBの小林が指摘するように、地位や学歴とは関係なく人間的関係を結ぶことが、一人ひとりのモチベーションにつながっている。CR-Zもまた、ホンダの社風が結晶したようなクルマなのである。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(小倉和徳、永井 浩=撮影)
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