学生時代の読書体験がam/pm買収を予知

2010年3月1日、わが社はエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を吸収合併しました。首都圏の約850店は今後2年以内に改装され、すべて「ファミリーマート」に変わります。コンビニ市場が飽和しつつあるなかで、8割以上の店舗が収益性の高い首都圏を中心に立地しているam/pmには、各社の注目が集まっていました。

ファミリーマート社長 上田準二 うえだ・じゅんじ●1946年、秋田県生まれ。70年、山形大学文理学部卒業、伊藤忠商事入社。同社畜産部長や関連会社プリマハム取締役などを歴任。2000年に顧問としてファミリーマートへ。02年より現職。

吸収合併までには紆余曲折がありました。直近では、2009年2月、ローソンが「買収基本合意」と報じられたものの、5月になって「買収見送り」を発表しました。am/pmの案件は過去にもたびたび、わが社に持ち込まれていました。09年のケースでもデューデリジェンス(資産査定)まで行っていましたが、買収の条件に「am/pmのブランドを残す」とあったため、最終的には交渉を打ち切りました。私はかねてから、「コンビニのM&Aはワンブランド化が大前提」と考えており、この点は譲れなかったのです。

実は、09年2月に買収の動きが報道された際、私は部下に、「まだ諦めるのは早いぞ」と言っていました。ウソではありません。私には「予知能力」があるのです。そして、その力は読書で培われたと言えそうなのです。

私が生まれたのは秋田県平鹿郡大森町字大森という所です。現在は横手市に編入されていますが、当時はテレビもなく、ラジオの電波も途切れがち。山河と田畑しかない辺鄙な町です。娯楽に飢えていた私は、自然と本を愉しむようになりました。時間はあり余るほどありました。学校の図書室の本はあっという間に読み切り、仕方がないので、町役場の公民館まで本を借りにいきました。ここの蔵書は学校と違って大人っぽい。梶山季之や柴田錬三郎を読み漁る日々でした。

受験勉強に追われた高校時代を経て、本格的に読書に取り組んだのは山形大学へ進んでからです。当時、集英社の『新日本文学全集』(全38巻)の刊行が進んでおり、毎月2冊ずつ買ってすべて読破しました。芥川賞や直木賞の受賞作も掲載誌でほとんど読みました。