大前 好き嫌いを言ってはダメですよ(笑)。

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「関西道」の経済力は世界15位

橋下 僕は是非やりたいのですが、運動論として、政治的に成り立たないのです。合併となると京都の知事、それから京都議会の過半数を取りにいかなければなりませんから。

大阪都構想をきっかけにして統治機構を変えなければいけないというメッセージを出しましたから、次はまた新たな政治闘争で、衆議院総選挙で道州制を一大争点に掲げる。都道府県の合併は政治的に相当エネルギーが必要で、それをやるなら一気に道州制です。

大前 大阪が京都と一緒になれば、京阪間に学園都市はあるし、世界的な企業も数多い。もちろん歴史的な観光資源では他の追随を許さないし、道州として大変なパワーを発揮できると思う。合併して「本京都」とでも名乗ればいい。大阪と京都の「本京都」から、さらに近県の自治体と一緒になって「関西道」のような広域行政体が誕生すればGDPは約1兆ドル規模になる。国家単位でいえばメキシコ、韓国、オランダ並みの大きさ。世界14位から16位のレベルです。大阪都の経済規模だと19位から22位くらいですね。

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大阪都の税収試算

図は大阪都が税収構造を付加価値税と資産税に変えた場合の税収の試算です。野田首相は消費税を10%にすると言っていますが、私がかねてから提唱している付加価値税を10%にすると、大阪都の場合はお釣りがくる。中央からの自立には、「歳入の自立なき自治」はありえません。この試算で何を言いたいのかといえば、大阪都は十分に経済的に自立できる。だから安心してやっていただきたい(笑)。

橋下 消費税に関して言えば、今は国と地方の配分割合で地方は現行の消費税5%のうち2%余りしかもらえない。大阪で上がる税収は今、6兆円ぐらいですけど、交付税を含めても70%弱しか戻ってこないという現実があります。僕らは大阪都を目指すに当たって、明治時代につくられた中央集権体制、なかでも国が地方を養うという地方交付税体制、これをまず白紙に戻してほしい、と言っているんです。地方が上げた税収はまず地方が自分でしっかり管理して、そこから国が必要な分を国に上納する。このためには国家運営システムを逆立ちさせるぐらいの根本的なつくり替えが必要です。

※すべて雑誌掲載当時


 

橋下 徹●大阪市長
1969年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大阪弁護士会に弁護士登録。98年「橋下綜合法律事務所」を設立。TV番組などに出演して有名に。2008年大阪府知事に就任し、3年9カ月務める。11年12月から大阪市長に就任し、現職。

大前研一●ビジネス・ブレークスルー大学学長
1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院修士課程修了。MIT工科大学大学院博士課程修了。工学博士。最新著『訣別 大前研一の新・国家戦略論』(朝日新聞出版)は「大阪都構想」の理論書でもある。

(小川 剛=構成 市来朋久=撮影)