尖った傾向を発掘する仮説を立てよ

このケースは実際にある企業で実施された取り組みを、業界や数字を変えてアレンジしたものである。

そこからわかるのは、適切な分解の切り口を見つけ出す重要性と難しさである。先に答えを聞いてしまえば「簡単だ」と思うかもしれないが、上記の業界ではアフターフォローへ注力する業者はいまだに限られている。旧来の常識に縛られているのであろう。

分解の切り口を発見するコツはあるのだろうか。

「やはり、はじめはある程度試行錯誤するしかないと思います。試行錯誤の経験を積むにつれ、やがて直感が働くようになっていく。ですから、最初はやみくもでもいいからとにかくいろんな切り口を試してみることです。今はITの発達で、それが簡単にできるようになりました。Excelのピボットテーブルを使えば、昔なら苦労して電卓を叩いて集計するようなことが一瞬でできます」(ザカティーコンサルティング ディレクター 細谷功氏)

ただし、この際に注意しなければならないのは、何のために分析を行っているのかという目的を忘れないことだ。その目的とは、前述したように尖った傾向を示す要素を探し出し、次の打ち手につなげていくことである。

「『この場合ならこの切り口』という公式のようなものはありません。大切なことは『尖った傾向を見つけたい』と強く意識したうえで、『こうではないか』と仮説を立てて切り口を探していくことです。そのとき、どう仮説を立てるかが問題になりますが、まず各分野の専門家に話を聞いてみることです。例えば専門家の話は8割方はその通りだが、2割ぐらいは従来の常識から変化していることがあると見通しを立てて、あえて専門家の考えと違うことも試していくのです。とくに時代の変化が激しい領域や『業界の常識は世間の非常識』という部分を疑ってみると、専門家の話と実際は異なることが意外とあるものです」

以上のように、足し算と掛け算という初歩的な数式でも、使い方次第で実にいろいろなことができる。実際のビジネスで役立てない手はないだろう。